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出口王仁三郎芸術館

大宮司朗先生インタビュー

 

霊狐、豆狸、河童、イズナ……闇に蠢く霊獣の世界


妖獣霊異誌
原題:動物界霊異誌


岡田建文=著 今日の話題社=刊
定価2,400円+税
A5判並製・復刻版

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本書は戦前に郷土出版社より郷土研究叢書の一環として刊行された『動物界霊異誌』をあらたに編集しなおしたものである。同じ叢書に柳田國男の『遠野物語』『山の人生』、佐々木喜善『老娼夜諏』などがはいっているが、本書はあくまでも動物による妖異現象は存在するとの前提にたったもので、通常の民俗学や昔話研究とは一線を画した異色の内容となっている。そのためか刊行後はほとんど注目されることなく、今日では入手困難な稀観本になっていたものである。
現代では狐に化かされたという話は、よほどの田舎でもめったに聞くことができない。だが、つい三十年くらいまえの日本の田舎では、まだ比較的そういう体験談が聞けたものだ。本書の刊行は昭和三年刊であるから、さらにさかのぼり、いまから約七十年まえになる。東京でも少し郊外に行くと街灯はなく、雑木林が黒い蔭をおとし、地方には電気のない村すら珍しくはなかった。
それでも著者は明治中葉からこのかた、動物にまつわる妖異体験が急速に少なくなりつつあることを指摘する。しかし、それは一般に考えられるように、科学が普及し、人々が「迷信」を信じなくなったからではなく、ほんとうの理由は、妖獣たちの生物的種としての潜勢力が落ち目になってきたからだ、というのが本書に流れる著者の主張である。
生物はその盛んな時代と否とでは、精力に大きな相違があると著者は力説する。繁殖力旺盛で種としての活力にみちあふれていた時代の狐狸には、人を盤惑するパワーがあった。著者はこの力を「動物磁気」という言葉であらわし、人を幻覚に誘ったり、人に愚依して意のままに操る一種の遠隔催眠能力の存在を想定する。
明治十年代までは全国におびただしい数の狐が棲息し、本書が刊行された昭和初期の同時代人でも想像できないほど賊雇した。たとえば、明治十七年の春、山陰地方が大雪にみまわれた際に、山をおりた狐が三次町近辺の各寺院の床下に避難し、それが多い寺では五、六十匹にのぼり、総数は三次町付近のみでも千匹は下るまいといわれ、町民が狐を救護するために焚き出しまでする騒動になったことがあるという。
ところが、近代化とともに全国的に山林が伐採され、狩猟がさかんになるにつれ、狐狸は衰亡の」途をたどり、その結果、かれらの強烈な精神力も急速に失われ、かつてのように人を盤惑することも少なくなってしまった。この理は普遍的なもので、人間や神仏にもあてはまる。平凡な人間でも、ふと他人から崇められると、偉大な精力を発揮したり、神仏も人間が頼ってこなくなると、とみに霊験力を萎縮させ、その結果は荒廃の社堂になる事例もあるではないか、と著者は力説する。なるほど説得力のある見方といえよう。
しかし地方によっては、この明治以降の大きな趨勢にもかかわらず、部分的に狐の勢力がもりかえした地域もあった。たとえば石見国東部の大田付近には、明治初年頃までは狐が大量に棲息していた。その後おおいに減少するが、大正にはいるとふたたび繁殖が盛んになり、狐が践雇するようになる。そのためか、本書で紹介される近年の実例としては、この地域の話が多い。
しかし、現代ではもうそんな地域にも開発の波が押し寄せ、生態系は舗装道路で寸断され、野性の狐狸はその棲息すらおびやかされている。狐の霊異談がリアリティをもつためには、狐の存在が身近なものでなければならない。若い世代で霊魂の存在や超常現象を信じる人の割合は五十パーセント以上というが、狐が身近に存在しない以上、狐にまつわる霊異談をたえて聞かないのも無理もないところである。
しかし本書を読めば、そういった現象が、かつては確実に存在し、確実に体験されたものであることを誰しも確信せざるをえない。落ち穂拾いをしているときにうっかり大きな石を崖下に落とし、狐の穴をふさいでしまった娘が、手拭いをかぶった謎の女に催眠状態のまま連れ出され、数日にわたって深い山中をひきずりまわされた話、竹松と称する外道(管狐)にまつわる逸話など、かつて存在した不可解な土俗空間の感触がひたひたと押し寄せてくる。いささか文体が古く、江戸時代の随筆からの引用は原文のままのところもあるため、多少読みにくいところはあると思うが、本書をつうじて、近代が「迷信」のレッテルをもって抹殺した闇の世界の断片なりとも知っていただけるならば幸いである。